解体してから売るか、そのまま売るか。判断の順番
2026年9月時点の内容です
先に知っておくこと:解体すると税金の扱いが変わります
家が建っている土地は「住宅用地の特例」で課税標準が圧縮されています。更地にすると、翌年からこれがなくなります。
| 区分 | 範囲 | 固定資産税の課税標準 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 1戸あたり200㎡まで | 評価額 × 1/6 |
| 一般住宅用地 | 200㎡を超える部分 | 評価額 × 1/3 |
「売れるまでの期間」が読めないまま先に壊すと、この負担が延々と続きます。解体は、売却の見込みが立ってからでも遅くありません。
判断の順番
① 相続空き家の特別控除を使う予定があるか
使う予定があるなら、ここが最優先です。この特例は「耐震改修して家ごと売る」か「全部取り壊して土地で売る」のどちらかでないと使えません。旧耐震の家をそのまま売ると使えません。
2024年から、解体は売ったあとでもよくなりました
以前は引渡しまでに解体を終える必要がありましたが、譲渡した年の翌年2月15日までに解体すれば適用されます。
つまり、売主が先に自腹で壊す必要はありません。買主に引き渡してから買主が解体する形でも、特例が使えます。
この改正を知らずに「特例のために先に解体しないと」と考えている方が、まだ多くいます。費用を先に出さずに済む方法があります。
② 建物に買い手がつく可能性があるか
次のどれかに当たるなら、壊さないほうがよい可能性が高いです。
- 再建築不可:壊すと建て替えができなくなるのが原則です。建物があるうちは住宅として使えますが、更地にすると用途が大きく限られ、価値が下がります。ただし「絶対に建てられない」とは限りません。建築基準法43条2項1号の認定、同2項2号の許可(建築審査会の同意が必要)、隣地の取得などで再建築できることがあります。壊す前に必ず市の建築指導課で確認してください
- 長屋・連棟:切り離しには隣の同意と壁の復旧工事が必要です。そのまま買う会社があります
- 市街化調整区域:建物を壊すと、次に建てられる条件が厳しくなることがあります
- 建ぺい率・容積率オーバー:今の建物と同じ規模のものは建てられません
- まだ住める状態:リフォームして住みたい層、賃貸に出したい投資家が買います
③ 建物が危険な状態か
屋根や外壁が落ちている、傾いている、不審者が入れる状態。この場合は売却の有無にかかわらず、対応が必要です。倒壊や落下で人に被害が出れば、所有者の責任になります。
市から管理不全空家・特定空家の指導や勧告が来ている場合も同じです。ただし解体しか道がないわけではありません。部分的な補修や、窓の閉鎖、草木の伐採で勧告が撤回されることもあります。
④ 土地として売れる立地か
更地にして価値が出るのは、新築が建てられて、その地域に新築を買う人がいる場合です。
- 建築基準法上の道路(原則として幅員4m以上)に2m以上接していて、建築確認が下りる
- 整形地、または分割できる広さがある
- 周辺で実際に新築の分譲が行われている
この3つが揃っていれば、更地のほうが買い手が広がります。逆に、周辺に新築の動きがない地域では、更地にしても買い手は増えません。
解体する場合に気をつけること
- 相見積もりを取ってください。同じ建物でも会社によって金額の開きが大きい工事です
- アスベストの事前調査が必要です(工事の規模を問わず義務)。調査結果の行政への報告は、解体部分の床面積の合計が80㎡以上などの場合に必要になります。古い家では屋根材や壁材に含まれていることがあります
- 付帯工事の範囲を見積書で確認してください。ブロック塀、樹木、井戸、浄化槽、残置物。ここの扱いで金額が変わります
- 残置物は解体業者に任せると割高になることが多い項目です。分けて考えてください
- 解体後の滅失登記が必要です(不動産登記法57条、解体から1か月以内)。あわせて市の税務担当に「建物滅失届」を出してください。登記が遅れる場合や未登記の建物の場合は、この届出で課税が止まります
- 市の補助制度がある場合、着工前の申請が条件です。壊してから申請しても受け付けられません
「解体更地渡し」という選択肢
売買契約を結んだうえで、引渡しまでに売主が解体する形です。
- 売れる見込みが立ってから壊せるので、固定資産税が上がったまま売れ残るリスクを避けられます
- 買主は更地として計画を立てられるので、買いやすくなります
- 解体費用は売買代金から出せるので、先に自己資金を用意しなくて済むことがあります
迷ったときの結論
先に壊さないほうがよい典型
- 再建築不可、長屋・連棟、市街化調整区域
- 売却の見込みが立っていない(買い手も価格も決まっていない)
- 相続空き家の特別控除を使う予定がある(買主に壊してもらう形が使える)
- 解体費用を自己資金で出す必要がある
先に壊したほうがよい典型
- 建物が危険で、近隣に被害が出る可能性がある
- 新築が建てられる土地で、周辺に新築の需要がある
- 市の補助制度の対象で、申請期間が限られている
- 建物があることで買い手が「解体費用の分だけ」値引きを求めてくる状況が続いている
判断がつかない場合は、壊さないでください。あとから壊すことはできますが、戻すことはできません。その状態のまま買う会社があるかどうかを先に確認してからでも遅くありません。
そのままの状態で売る
向いている人:再建築不可・長屋・傷みが進んだ家。解体費用を出さずに済み、時期も早く確定できます。荷物が残っていても引き渡せます。
注意点:買い手が限られます。個人の買主に仲介で売る場合より価格は下がります。
解体更地渡し(契約後に解体する)
向いている人:新築が建てられる土地。売れる見込みが立ってから壊せるので、固定資産税が上がったまま売れ残るリスクを避けられます。
注意点:解体の段取りと期間が必要です。特別控除を使う場合は書類と時期の条件に注意が必要です。
先に解体して、更地で売り出す
向いている人:建物が危険な場合、市の補助制度の期限がある場合。買主が計画を立てやすく、内覧もしやすくなります。
注意点:解体費用が先に出ます。1月1日に更地だと翌年度から土地の税の軽減が外れます。売れるまで負担が続きます。
今は壊さず、持ち続ける
向いている人:将来使う予定がある方。建物があるうちは土地の税の軽減が効いています。
注意点:傷みは進みます。管理が行き届かず勧告を受けると、結局その軽減は外れます。
よくあるご質問
壊してからのほうが高く売れると言われました。
新築が建てられる土地ならその通りです。ただし再建築不可の場合は逆で、壊すと価値が大きく下がります。その会社に、更地にした場合の想定価格を書面で出してもらってください。
解体費用を出す余裕がありません。
先に壊す必要はありません。そのまま買い取る方法と、売買代金から解体費用を出す方法があります。相続空き家の特別控除も、買主が解体する形で使えるようになっています。
解体費用はいくらですか。
構造・広さ・前面道路の幅・隣との距離で大きく変わるため、現地を見ないと意味のある金額が出せません。見に行けば具体的にお伝えします。相見積もりの取り方もお伝えします。
解体したのに建物の固定資産税が来ました。
滅失登記をしていない可能性があります。解体から1か月以内に法務局へ申請してください。自分でもできます。
補助金を使いたいのですが。
着工前の申請が条件です。市によって対象の条件も受付期間も違います。市町村別ページに担当課と条件をまとめていますので、ご覧いただくか、お電話ください。こちらで確認してお伝えします。
壊す前に、一度確認させてください
荷物が残ったまま・登記が古いまま・長屋のまま、どんな状態でも大丈夫です。
「まだ売ると決めていない」段階のご相談も無料。しつこい営業はしません。
9時〜21時(土日祝も受付)/「空き家ヘルプを見た」とお伝えください
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藤尾 涼太(宅地建物取引士(大阪)第122075号)
八尾市を中心に、大阪・奈良・兵庫で空き家の売却と買取を担当しています。市役所や制度の内容は、公表資料の確認に加えて、必要に応じて各市の窓口に直接確認したうえで書いています。
- 運営
- 株式会社日本トータルプロデュース
- 所在地
- 大阪府八尾市南植松町5丁目182 日本TPビル
- 免許
- 宅地建物取引業 大阪府知事(2)第60824号
- 所属
- 公益社団法人 全日本不動産協会 会員
- 電話
- 072-990-6686(9時〜21時(土日祝も受付))
